■呼吸法 

私たちが、直接自らの命に関わる健康維持のために出来ることは、「食」に関する
事ともう一つそれは「呼吸」しかない、と言われています。
食に関しては、わが国では今や飽食の時代を迎えています。方や、この同じ時に、
飢餓のために3秒に一人がなくなっています。飽食が過ぎれば健康を害し、その
ために命の危機に瀕している人が増えています。

健康管理のための食の知識も豊富になり、賢明な人々は、意識し認識しつつ、
自らの意志をもって、管理にあたっている事と思います。
さて、残されたもう一つの「呼吸」の管理はどうでしょうか。この呼吸ばかりは、
誰かが成り代わって、食の管理をしてくれるような訳にはゆきません。
余程のことがない限り、周囲に気づかれることもなく蓄積しているかもしれません。
自らが気がづき、自己管理するしか方法はないのです。

現在、私たちは様々なストレスに襲われ、心身の健康のボーダーラインはどこに
あるのかさえ分かりにくくなっています。 ひょっとしたら、すでに病んでいるかも
しれないのです。脅かす訳ではありませんが、すでに大人だけではなくストレスの
蓄積は、どんどん低年化しているのです。

呼吸機能の低下、肺活量の軽減、運動機能の低下、集中力の低下、学力低下、
自己閉鎖、人間不信、学級崩壊、これらは極端にいえば連鎖反応とも見えるのです。
知らぬ間に、深い呼吸が出来なくなり、呼吸自体が浅くなっていると言う現実を考えた
とき、どなたにも心当たりがあるのではないでしょうか。

あわてふためいて、パニックを起こしたとき、人はどのような呼吸になるでしょうか。
たとえば、人前でスピーチしなければならない時、発表会で出番を待つ時、心臓が、
ドキドキして頭が真っ白になっている時、どんな呼吸をしているでしょうか。
そんなとき、知らず知らずのうちに深呼吸をしたりしないでしょうか。それは「深い呼吸
をして心身を落ち着かせなさい!」という脳からのメッセージなのです。
私たちのからだのメカニズムは実に精巧に出来ています。そして、感情の支配
(コントロール)をする「意志」の働きも備わっているのです。

まず、理屈抜きに直接的に素早く効果を表すのが「呼吸法」なのです。

■ため息

「呼吸」は、感情の動きと表裏一体です。感情がコントロールできれば、
呼吸もそれに応じてコントロールされます。呼吸をコントロールすれば、
感情もコントロールされます。
「どうにも話が進まない、どうしたものか・・・」といった状況で、「は〜」とため息を
つくことがままありますね。「困った時は深い呼吸をして思考回路の立て直しをしなさい」
と言うメッセージなのでしょう。連続的に深い吐き切る呼吸をすることです。  
  
■あくび
これはどなたもお分かりでしょう。「脳のほうが酸欠になってるよ〜そのまま寝るか、
そうでなきゃ酸素を送ってくれ〜」と言うメッセージだと思ってください。

■咳とくしゃみ

「のどか器官に異物があるか、なにがしかの変化があるぞ〜」「鼻に変化があるぞ〜」
と言う事ですね。咳もくしゃみも吐く呼吸であって、邪魔者を排出しようとしているのでしょう。

このように考えますと、私たちの体は心身ともに健康であるために、一生懸命働いてくれてい
る訳です。我が身のために呼吸のコントロールをして、もっともっと心身のため にいい状態を
作ってあげたいと思いませんか? 

■ 深い呼吸のもたらす効果

・免疫力 ・自然治癒力 ・生命力 を高める
(米国の医学者による研究では、手術後の患者、
投薬中の患者に、呼吸法を実践したグループ実践しなかったグループに分けての結果は、
実践した方が、40%の治癒力のアップがみられた、との報告があったと言うことを聞きました。
十数年前のことで、呼吸法に関心の深かった私にはとても印象に残ったことでした。)

・自律神経のバランスを保つ
(呼吸は、交感神経と副交感神経の働きにより、バランスを保たれています。その働きが、
アンバランスになることから、自律神経の失調が起こります。早いうちに呼吸法で整えること
は可能ですが、自律神経の失調が重くなっている場合は、医師の指示を仰いでください。)

・血圧の安定
(感情の動き、呼吸、心拍、血流、は常に連動しています。呼吸を安定させることは、我々  
意志力で可能なことですから、呼吸の安定によって血圧のコントロールは可能な訳です。)

・脳回路の活性
(使い古しの呼吸は、多少の酸素を残しながらも、吐き切ることをしなければ、常時肺の奥
に残留しています。宿便のようなものです。ですから絞り出すように吐き切ることによって、
否が応でも反射的に新しい空気を吸い込みます。これが、呼吸法の原点です。
当然十分な酸素が、体中に巡ります。特に、吸い込んだ酸素の60〜70%は、脳が必要と
しているそうです。深い呼吸は、心の安定をもたらすものですから、思考回路が活性すること
によって、一層素晴らしい効果をもたらすことになるでしょう。)

・心の安定(すでにしるしたとおりです)

■呼吸法のコツ

呼吸と脱力(余分な力みを抜く)は表裏一体であることはすでに申し上げました。
呼吸法が正しく行われることは当然望ましいことなのですが、仮に自己流であっても
息を吐き切ることくらいは、誰にでもできると思います。ただし、ここで、先に述べました緩める
ことが重要になります。古い息を絞り出すには、腹筋の働きが必要です。一生懸命の余り、
体中を力ませて絞り出すようではいけません。肩や胸の力は抜いて、腹筋だけの力を働かせ
ていただきたいのです。何故なら、腹筋を使うことによって、横隔膜が上へ押し上げられて、
肺の奥深い部分から、古い息を押し出す働きをしてくれるからです。

この事からも分るように、古い息を押し出すことをしなければ、ついつい、肺の上部で呼吸する
ことに慣れてしまいます。すると、呼吸は浅くなり、せからしくなり、当然肺活量は軽減し、
イライラしがちになり、感情的になり、人間関係が悪化し、ストレスが溜まり・・・となってしまいます。

私は、「声のおしゃれ」を実践をする者ですから、ついでに申し上げますと、
加えて声の出が悪くなると言うことです。さらに申せば、腹筋力の低下は呼吸機能の低下となり、
足を支える脚力にもおよび、姿勢が悪くなり、失禁が早まり、ろくなことはありません。
腹筋は死ぬまで大切な働きをします。だからと言って、腹筋力を強めるために、運動選手のような
訓練を必要とする訳ではありません。「ここに腹筋あり!」と思って軽く締めること、お腹をへこます
のではなくて、軽く絞ることです。年代によって絞り具合は異なりますが、これも楽しみながらやって
みて下さい。

何をするにも力みを抜くこと、しかし、下半身は甘やかさないこと!よく歩きマメに動くこと、
(これは私自身に言って聞かせているようなものですが!)そして、呼吸法をすることを是非とも
お勧めしたいのです。
 

■呼吸法を習得するために
                                
1)平常呼吸 = 吐いて吸っての二段呼吸
 
まず、日常的に自然に行われている貴方自身の呼吸を確認してみましょう。

2)吐き切る呼吸 = 吐いて、更に吐き切って、緩めて吸う三段階呼吸


腹筋を絞り切るようにして吐き切り、そして一気に腹筋とそれに伴う周辺の緊張を緩めますと、
反動的に吸気が行われます。息を吐く際に口腔で「ふ〜」とか「す〜」と言うように少し抵抗を
させますと吐く息がコントロールされて均一になり、腹筋をしっかり働かせやすくなると思います。
これを基本として体が覚えてくれるまで繰り返しましょう。

3)肺活量増進呼吸 = 更に肺活量を豊かにするための呼吸
 

吐いて、更に吐き切って、緩めて吸って、さらに目一杯吸って、の四段階呼吸
この呼吸法は、若い方には目一杯やっていただきたいと思いますし、高齢の方には、
ほどほどの吸気で実践して頂きたいと思います。吐く呼吸は、心拍や血流に圧迫をかけることは
ありませんが、吸気の場合は時として、圧を掛けてしまう場合があるのではないかと思うからです。
一生懸命やって頂くのは嬉しいことですが、形の上で捕らわれすぎないで常に自分自身の感覚
に耳を傾けながら行っていただきたいと思います。

呼吸法はこのほかに様々な方法があります。世界的、歴史的に数え切れないほどの伝承された
方法があると聞きます。 ここに示した事は、あくまでも、単純に分かりやすくしたものです。
故、九大心療内科名誉教授池見酉次郎先生は、著書の中で、腹式呼吸、長息呼吸は、
思考回路を活性し、集中力を高めると書かれています。

香りの呼吸 = リラックスしながら楽しみながらの呼吸法
呼吸法には、さまざまな方法がありますが、先にも述べましたように、第一に吐き切る呼吸が
ポイントです。それによって、初めて、深い呼吸が可能になります。
その方法、コツを身につけるには、ある程度指導を受ける方が、我流にならず早道ではないかと
思いますが、私の体験から、誰にでもできる簡単な腹式呼吸をお教えしましょう。
私は「香りの呼吸」と言っているのです実際に、バラの花とか、金木犀の花のような、甘すぎず、
強すぎない優しい香りの花を、ほのかに香りが感じられる距離から、体をリラックスさせ、
細い静かな呼吸で嗅ぎ取ってみて下さい。ゆっくりと、たっぷりと香りを楽しんでみましょう。
お腹一杯になるまで・・・・・
もし上手にできたとしたら、それが、腹式呼吸です。あとは絞り切るように吐き切るだけです。
何度も繰り返しながら、花を愛でる気持ちを忘れないでやってみてください。
きっと、あなたの顔は、眉間が開き、目を細めて、優しい顔になっているはずです。
人間の嗅覚は、鼻腔の最も奥の、脳に近い所にあります。
優しい気持ちで呼吸することによって、感性のいい刺激になるはずですし、
リラックス効果は抜群だと思います。

人間のメカニズムの不思議 
余談になりますが、もし誰かに「この花、とってもいいにおいよ。」と差し出された奇麗な花を手に
とって、あなたはどんな表情で香りをかぐでしょうか?
それとは逆に、「このお肉変な臭いがしない?悪くなってるのかしら?…嗅いでみて」と言われた
時、あなたはの表情はどんな表情をするでしょうか? 
すでにいい香りか、いやな臭いかの、情報が入っていますね。
「いい香り?それなら安心して嗅覚細胞に速やかにとどけなければ・・・」と、脳は伝達します。
嗅覚細胞は、鼻腔の一番奥の最も脳に近いところにありますから、安心して鼻腔を開き、
ゆっくりと、たっぷりと吸気を行います。体も緊張することなく、たっぷりと深い吸気を行います。
先にも申しましたとおり、ごく自然に行う腹式呼吸です。
それに反して「臭い!」と言う情報を得ている脳の働きは、鼻をすぼめさせ、出来るだけちょっぴり
の吸気を瞬間「ふん、ふん」と嗅覚細胞に届けるに止めています。
いい香りの時のあなたの顔は、眉間を開き、目を細め優しい顔をしているはずです。
臭いと知っての時は眉をしかめ、鼻をつぼめいやな顔をしていますよね。
これが、体に備わっているメカニズムなのです。人間は、いいメカニズムを働かせるほど健康で
いられると言われています。
楽しいことであっても、度が過ぎたり享楽的になってしまっては逆効果だそうです。
すべて、ほどほどのバランス関係なのですね。

ただし例外があるそうです。人の喜ぶことを自らの喜びに出来る人、それが、人のためになり、
自らの犠牲を払ってでも人に対しての愛しみや思いやりを持つ人は、β―エンドルフィンという
脳内ホルモンが、無限に放出されるそうです。このホルモンの化学構造式は、モルヒネと大変
よく似たものだそうです。そのために、脳内モルヒネとも呼ばれているとききます。
モルヒネは中毒になれば、廃人と化してしまいます。しかし、β―エンドルフィンは、若返らせ、
ますますやる気を起こさせるそうです。ある大脳生理学者は「それは、誰にでもできる生き方では
ないが、このような高次元での生き方ができる人に対しての、神様からのご褒美、
としか言いようがない」というのです。体のメカニズムは、その肉体に生きずく思い、心、精神、魂に
よって機能していることを思わずにはおれません。人間って、育み方によっては素晴らしい能力を
発揮するものなのだな〜と思います。

呼吸法のもたらす効果は、肉体的に、精神的に実に多岐にわたるものです。
呼吸法は、食い溜めが出来ないように、吸い溜めも出来ません。
ちょっとした時間に、5回〜6回でもいいのです。日に何回でもかまいません。
出来れば、身につくまでは、時間を作って、自分と対峙するように集中して静かに行うことを
お勧めします。時間は長くとる必要はありませんが、集中する事が大切だと思います。
途中で投げ出さず少しずつでも持続する事で、より高い効果が望めます。
自然治癒力を高め、生命力を高め、心を安定させ、脳の活性化等々、心身が健やかになる
ための素晴らしい働きがもたらされますので、じっくりと取り組んで頂きたいと思います。
時間も掛からず、場所を選ぶ必要もなく、お金もかかりませんね。